世界の果て 3

「ギアは出せないのか?」
狭苦しい装甲トラックの中、斯波と目つきの悪い中年2人が座っている。
辺りは暗く、ライトをつけなければ何も見えない。
汚染された海水の匂いがする。耳をすませば
ケタケタケタ
魔造兵器ドラウナーの声がする。

ドラウナーと白兵戦闘をして生存する可能性は少ない。
大型ドラウナーにトラックを転がされれば一巻の終わりである。
「だめだ。ギアの搭乗は許可できない。前線に運搬する大事な戦力だ」
背の高い細面の中尉がこたえると、

「魚くらいてめーでたおせとのご命令だとよ」
「いつものようにケツで稼ぐかあ?臨時少尉殿!」
と目つきの悪い中年二等兵が言った。

「今、何と言った」
「ああ?なんとでもいってやるよ。この点取り虫・・・?!」

ドラウナーの爪が装甲トラックの防弾ガラスを貫いた。
2人はとっさに首をよじってよける。

「やるしかないな臨時少尉殿」
「……」

汚染された海岸。その砂浜からドラウナーが4匹でてきた。合わせて5匹
醜く溶けた外見と腐臭。そしてケタケタという鳴き声。

中年の放ったAKライフルの弾は爪でガードされ、あっけなく中年は喉を串刺しにされ絶命した。

斯波もライフルを放つが効果は認められない。爪で斯波の強化外骨格を貫かれる。
フラッシュグレネードをさく裂させ、トラックまで後退する斯波。

「やむを得ん。搭乗を許可しよう。俺はギアには乗れないんだ」

中尉にうんざりしながら、斯波はギアを起動する。
右腕のレーザーライフルでドラウナーははじけ飛んだ。

世界の果て 2

前方の哨戒機から醜いキマイラの血がほとばしる。
パイロットもしくはAIからの声が聞こえる。
「また1機撃墜したにゃり~~☆」
斯波は顔をしかめる。
「戦闘中だぞ」
何だこのふざけたパイロットは。
生存性の高い蜘蛛の中で華麗に舞う哨戒機の存在は斯波にとって目障りだった。

砂漠の電波塔にそいつはいた。
光学迷彩で姿を消してはいるが、卵型の頭部をもつ醜い姿がほんの一瞬見えた。
「キメラの母体だ」

キィンという音がして、哨戒機の二足歩行ロボットがガシャリと倒れた。
「やられたにゃり~……」
「ジャマーか!クソっ!」
スパイダーの鋼鉄のコックピットでは計器の表示が乱れる。

「スパイダー レールガンの発射を許可する」
「了解!」

闇雲にはなった運動エネルギー弾はキメラの母体に当たり消滅した。

 

世界の果て 1

ガシン…ガシン…
異様な鋼鉄の大蜘蛛が砂漠を横断する。
蜘蛛の脚が砂をとらえ、大きな穴をあける。

「暑い……」
戦車兵は呟いた。
まだ少年のようなあどけない顔をしているが、
目元には深い皴が刻まれている。
右眼の傷を隠すために巻いている眼帯から汗が流れた。
戦車兵斯波(しば)一郎臨時少尉の任務は未確認魔造兵器の駆逐だったが、
斯波にはこのデカい蜘蛛の玩具の試験運用であることがわかっていた。

斯波にはこの作戦で手柄を立てて、前線にたちたい理由があったのだが、
後方での戦闘も砂漠の暑さも前を飛ぶ哨戒機にもイライラを募らせた。

「HQよりローズ1 状況を報告せよ」
「こちら ローズ1 交戦の跡あり。このあたりのようです」

人型二足歩行ロボット「F-14ストライクイーグル」のパイロットがこたえる。
AIか有人か判別できないが声は女性だ。

「HQよりスパイダー 敵は見えるか」
「キメラ級が(2,3,4) 4 射撃許可求む」
「許可する。ローズ1サポートせよ」

蜘蛛の眼のあたりから砲門が伸びる。
重力と弾道計算はAIが勝手に行う。寸分たがわぬ軌道だったが
ハエ型魔造兵器キマイラは戦車砲の熱源を感知して避けてしまった。

魔造兵器キマイラは5mほどの大きさである。ライオンとハエを合成したようなフォルムで食事中には見たくないタイプの容姿だ。

キマイラは口腔内で高熱源体を生成する。その発射速度は通常砲弾とかわらない。愚鈍な鉄蜘蛛は被弾を許してしまう。

「あちーな……」

熱弾を受けて揺れる機体。斯波は冷静に次弾を装填する。
グシャリという音がした。2体のキマイラは散弾砲弾をあびてはじけ飛ぶ。