「ギアは出せないのか?」
狭苦しい装甲トラックの中、斯波と目つきの悪い中年2人が座っている。
辺りは暗く、ライトをつけなければ何も見えない。
汚染された海水の匂いがする。耳をすませば
ケタケタケタ
魔造兵器ドラウナーの声がする。
ドラウナーと白兵戦闘をして生存する可能性は少ない。
大型ドラウナーにトラックを転がされれば一巻の終わりである。
「だめだ。ギアの搭乗は許可できない。前線に運搬する大事な戦力だ」
背の高い細面の中尉がこたえると、
「魚くらいてめーでたおせとのご命令だとよ」
「いつものようにケツで稼ぐかあ?臨時少尉殿!」
と目つきの悪い中年二等兵が言った。
「今、何と言った」
「ああ?なんとでもいってやるよ。この点取り虫・・・?!」
ドラウナーの爪が装甲トラックの防弾ガラスを貫いた。
2人はとっさに首をよじってよける。
「やるしかないな臨時少尉殿」
「……」
汚染された海岸。その砂浜からドラウナーが4匹でてきた。合わせて5匹
醜く溶けた外見と腐臭。そしてケタケタという鳴き声。
中年の放ったAKライフルの弾は爪でガードされ、あっけなく中年は喉を串刺しにされ絶命した。
斯波もライフルを放つが効果は認められない。爪で斯波の強化外骨格を貫かれる。
フラッシュグレネードをさく裂させ、トラックまで後退する斯波。
「やむを得ん。搭乗を許可しよう。俺はギアには乗れないんだ」
中尉にうんざりしながら、斯波はギアを起動する。
右腕のレーザーライフルでドラウナーははじけ飛んだ。