ブラックホールと裸の特異点 熱力学第二法則 世界線と宇宙検閲官仮説

ヘルマン・ミンコフスキーの四次元空間の点は事象として呼ばれる。
この点はすべて空間的な明細と共に時間的な明細を持っている。

ミンコフスキーの四次元幾何学の時空は、それ以前の時空とは異なる。
ミンコフスキー以前の時空は、単に、異なる時刻での三次元の表面の連続と考えられてきた。

ミンコフスキーの四次元空間Mの幾何学的構造はヌル円錐と呼ばれ、砂時計のような頂点pを共有する円錐と逆円錐をつなげたようなものである。

ヌル円錐は閃光をイメージすると直観的に理解できる。
広がった状態から事象pに向かって集まってゆき(過去ヌル円錐)、pを過ぎると、今度は広がり始める(未来ヌル円錐)。(追記:砂時計の砂をイメージすればよいかもしれない)

アインシュタインの理論は、質量をもつ粒子の速度は常に光速よりも遅くなければならないと定義している。ミンコフスキーの時空の概念を使ってこのことを説明すると、質量をもつ粒子の世界線(その粒子の歴史を作るすべての事象の軌跡)は、それぞれの事象におけるヌル円錐の内部になければならない。大きな砂時計の中に無数の小さな砂時計が存在するモデルをイメージしてほしい。無数の小さな砂時計(粒子の事象)は、大きな砂時計のガラスの外を出れない。この大きな砂時計のガラス面を世界線と呼ぶ。

質量が大きすぎる恒星が進化の末期に破滅的な崩壊をすると予想されるようになったきっかけは、1931年のスプラマニアン・チャンドラセカールによる白色矮星の研究だった。最初の発見された白色矮星はシリウスという不思議な暗い伴星で、太陽に匹敵する質量をもちながら、その半径は地球程度しかない。この白色矮星が重力によって収縮する力が電子の縮退圧を上回った時に(チャンドラセカール限界を超えた時に)どうなってしまうのかという問題に人々は取り組み始めた。

太陽のような普通の恒星(主系列星)は進化の末期に外層が膨張して赤色巨星になり、電子が縮退した中心核を持つようになる。巨星を構成する物質は、外層から宇宙空間に流出すると同時に、中心核に徐々に蓄積していく。太陽のこのときの質量はチャンドラセカール限界を超えないと予想され、白色矮星になり、徐々に冷え、黒色矮星になると予想されている。

しかし、もっと質量が大きい恒星ではある段階で中心核が崩壊する。恒星の中心部に向かって落下する物質は非常に激しい超新星爆発を引き起こす(数日間はその恒星が属する銀河全体よりも明るく光る)。この過程で多くの物質が吹き飛ばされ、残った中心核はさらに密度を高め、中性子星となる。

この中性子星の質量にも上限があり(しばしばランダウ限界とよばれる)中性子の縮退圧を重力が上回ると重力崩壊を阻止するものは何もなく、ブラックホールになると考えられている。ブラックホールは巨大な質量をもつ点であり、捕捉面にとらえられた粒子はたとえ光でも脱出できない。(質量が大きく、体積が小さいものほど引力が増える)

さて、ブラックホールでは、先に話した砂時計の状況とは大きく異なる。砂時計は内側につぶれ、未来円錐の一番外側の部分が垂直になる。このヌル円錐の包路線から、「事象の地平線」とよばれる三次元表面が与えられる。星を形成していた物質はこの「事象の地平線」の中に落下してゆく。

ブラックホールの引力により、粒子の世界線や「事象の地平線」の内側で生成した光の信号は、事象の地平線に出ることはできない。つまり、ブラックホールから十分離れた安全な観測者はブラックホールの内部の事象を見ることはできない。

ブラックホールの内部状況を知りたいと考えるのは自然である。ブラックホールの中心の点(カーブラックホールではリング)は特異点とよばれており、時空の歪みが無限大になる。ここでは物理法則は守られず、時間の終わりが訪れる。ブラックホールに時空の特異点があることは、物理学者にとって根本的な問題であり、ビッグバンによる宇宙の始まりの対極にある問題としてとらえられている。

熱力学第二法則にしたがうならば、ビッグバンのエントロピーは途方もなく小さくなくてはならない。そして、特異点のエントロピーは無限に大きくなくてはならない。

ブラックホールの内部にある特異点は、外側にいる観測者からは見えるはずがないというのが、宇宙検閲官仮説である。観測できる特異点を裸の特異点という。詳しい状況は筆者の理解の範疇を超えるので、(この記事のほとんども筆者の理解の範疇を超えているのだが)省略するが、ある物理条件下では宇宙検閲官仮説は破られ、裸の特異点の観測に成功したという。

熱力学第二法則とは無情な法則で、宇宙は膨張を続け、いずれ熱的な死をむかえる。しかし、生命をもたない粒子にとっては時間は無意味なものにすぎず、永遠がそこにはあるだろう。

参考文献
宇宙の始まりと終わりはなぜ同じなのか ロジャー・ペンローズ 新潮社

大気圏離脱時に熱が問題にならない理由

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大気圏再突入時にスペースシャトルが高熱になることはよく知られている。
では何故、大気圏離脱時は問題にならないのか?

大気圏脱出速度は、第一宇宙速度と呼ばれるが、秒速約7900mである。

シャトル再突入時に超高速で成層圏を通過すると、先端部が空気を断熱圧縮する。断熱圧縮された気体は温度が上がるが、1万度を超えることもある。(空気は気体からプラズマ状態になる。)この熱はシャトルと空気との摩擦熱ではない。この熱エネルギーにより、シャトルの速度は減少する。

つまり、空気があるうちはそこそこ加速すればよく、(減速するため燃料の無駄である)真空中で加速すればよい。そのため、大気圏脱出時は熱が問題になる速度にはならないということである。

この7.9㎞/sという速度はICBMの速度と一致する。実はスペースシャトルはV2ロケットというナチスドイツ時代に開発された弾道ミサイルが起源であり、人工衛星やスペースシャトルは同時に開発されてきたものである。