群青が消えてゆく 2

「重い!」
「装甲もっと削れないの?」
コックピット内のゴーグルをした少女は地団太を踏む。
スロットルを蹴ってバックバーニアを噴く。
「あぶねーな!」
「これ以上重量削ったら音の壁でバラバラになるぞ!」
壮年のエンジニアがチタンフレームをつけたり剥がしたりしている。
「レーザーバルカンさえあればいいわ!」
「デコイとかミサイルなんていらない!」
少女のヒステリックなおねだりがやまず、丸菱重工エンジニアの恩田は胃を痛める。
「こんなガキに日本の運命委ねるなんてな」
アメリカ様のF-40LightningⅢを改修したJ-1000通称JKはパイロットにより異常な軽量化を命ぜられた。標準装備のデコイはともかく、ミサイル機構を外せというのは自殺行為だ。作戦内容によっては核を使用することもある。女子高生が搭乗するということでデコイフレアの装備を恩田が打診したのが裏目に出た。
「死んでも知らねーぞ……」
恩田はデコイフレア機構を外すよう部下に指示した。耐熱強化セラミックスをコートするようにも指示した。女子高生には軽くなったように思えればいい。

ナカガワが大陸のマルチロールスホーイを派手に墜としてくれた。
女子高生が開戦の火花をきることはなくなったが、すぐに出撃命令が出た。

「キリシマ!2号機で出撃しろ!1号機は軽くしといてやる!」
重工の飛行場から出撃とは女子高生のデビュー戦にふさわしい…のだろうか。

 

 

群青が消えてゆく 1

マジかよ…

閃光……

早く終われと思っていた人生が終わった。
爆破テロで肉体を失った俺がバス停に並ぶ。友人が一人。金髪の女子高生が一人。
肉はあるが他人の物。その体で女子高生を見る。

(まだ実感がわかない)

女子高生は体調が悪そうだ。心配そうに見つめていると、
男子高校生が女子高生の荷物を持って、バスに乗り込もうとするがドアが閉まってしまう。回送だった。とバツが悪そうにする男子高校生。 この世界は終わってしまうのだろうか。金髪の女子高生の巨乳を見ながら思った。

大陸のアホどもが侵略戦争を仕掛けてきた。この国にもうそんなに価値はないのだけれど、占領した事実があればアホどものテンションが上がるんだろう。
うちの国の虎の子、装甲イージス艦を落とすために、重爆撃機が襲ってくるらしい。
メリケンの偉い人が助けてくれると政府高官は信じ切っているらしく、何とかアラートがなりやまない中政府は誰も動かない。

空母”みかがみ”でサンダーバードよろしく俺が出撃するのだが、これが夢でないのはカサついた唇が裂けた痛みと血の味が教えてくれる。 このナカガワという名前だった青年の体も特別優れた体ではなく、身元がない遺体を復元したものだ。

丸菱重工が作成した新型戦闘機F-5は、F-35を改修した無人機という振れ込みだが、
その実この俺が搭乗している。
脳科学者が手を叩いて喜びそうな管を脳幹に挿し、F-5の制御主系に接続する。
電解質溶液が脳の中に入ってくる、味は濃いポカリに近い。

操作するのはミサイルと機銃発射スイッチだけだ。発射した回数と秒数が記録されて、政府高官に送付されるらしい。 日本に不都合な行動をすれば、ナカガワの首が物理的に飛ぶということだ。濃いポカリが口を潤していく。

大陸のアホが発射したミサイルが、重巡洋艦に着弾し、赤い爆炎に包まれる。
黒いF-5のステルス機体が煙に吸い込まれていく。
大陸のスホーイをマルチロックしたミサイルが瞬時に爆発し、旧ソビエトの名機が海に吸い込まれていく。戦闘機の重油が燃え、日本海が赤く染まる。

群青が消えてゆく。