ユング心理学 アニマ・アニムス introduction

アニマ・アニムス

ユングは、夢の中に現れる異性像すなわち、男性であれば女性像、女性であれば、
男性像が、心理的に非常に大きい笑みを持つことに気付き、それらの元型として、
女性像の場合をアニマ(anima)、男性像の場合をアニムス(animus)と呼び、
その意味を探求した。

普遍的(集合的)無意識について述べたとき、影(shadow)について説明した。
影は、前に述べたように夢のなかでは、自分と同性の人物によって人格化されるのが通例である。つまり、男性にとって、夢の中の男性像は、その影の心像であり、女性はアニマの心像である。そして、女性にとっては、夢の中の女性像は影の心像であり、男性はアニムスの心像とみることができる。

影は個人的無意識との関連が深く、比較的理解しやすいものであるが、これから説明用しようとするアニマ・アニムスは、無意識のより深い層にあって、把握することが
困難なものである。アニマ・アニムスを説明するためには、それと対応するペルソナ
(persona)について述べなければならない。

ユング心理学 夢分析 夢の機能 4

夢には他にも、逆補償性の夢や過去の嫌な体験を繰り返してみる反復夢などがあるが、ここでは、反復夢の簡単な説明をして、夢の機能について総括する。

戦争時の体験などショックが大きすぎる体験を夢で繰り返し見る場合(反復夢)、ショックな出来事が自我に完全に統合されていないので、それを夢で再び経験しつつ、自我への統合を試みようとしているものと考えられる。この場合は、夢を解釈する必要はまるでなく、その夢に出てきたような経験について患者に語らせ、それを治療者が聞き入ることが大切である。

夢の説明をしてきたが、夢の重要性と素人の”解釈”がいかに危険か、理解されたと思う。ユングは夢において象徴性の高いイメージ(幾何学模様や十字架、性器の隠喩など)が出現することを夢の機能の一つ、象徴の生産機能としてあげている。

疲労が激しい時は、眠ることをお勧めする。そして、夢分析を心理両方の専門家でない健康な人はやるべきではなく、忘れてしまうことをお勧めする。

ユング心理学 夢分析 4 夢の機能 3 予知夢

(3)予知夢(telepathic dream)

展望的な夢について述べたが、全く細部に至るまで予見的な夢も存在する。
ここでは、その典型的な例をあげる。これはハドフィールドの著書にある例であるが、少し簡単にして述べる。

S夫人は夢で、息子のFが見知らぬ人と、どこかの崖にいるのを見た。
Fは急に崖から滑り落ちた。S夫人は見知らぬ人に向かって、「どなたですか」とたずねる。そのひとは「ヘンリー・アーヴィンです」と答えるので、「アーヴィンって、俳優のアーヴィンですか」というと、「いや、俳優ではありませんが、似たような職業です。」という。この夢から覚めてS夫人は息子のFのことを大変に心配するが、Fの兄は彼女の心配を笑い、大丈夫だと慰める。八日後に、Fはある崖の上で殺害され、S夫人はその場所を訪れる。そこで、Fが殺されたときに居合わせた人に出会い、それが夢に出てきた見知らぬ人であると思い、名前を尋ねると、ヘンリー・デベレルというが、コンサートで歌を歌ったりしていて、そのときは、ヘンリー・アーヴィンとなのっていたと告げる。

この夢は、息子の死のみならず、その場に居合わせた見知らぬひと、およびその名前まで予知した不思議な夢である。この種の夢は、事の大きさに関係なく、他にも報告されているが、これらになると偶然の一致として簡単に葬り去ることはできない。

予知夢に見えて実はそうではない、事例にも注意しなくてはならない。前日に旅行先の夢を見て、旅行の当日に夢で見たのと同じ景色をみて、予知夢をみたと感じた人が実際は幼いころに言っていたり、テレビやネットでみていたりすることもある。

上にあげた予知夢の例は、例外的なものであり、現在も心理学的にも解明されていない。

 

ユング心理学 夢分析 3 夢の機能 2 夢のお告げと危険性

(2)展望的な夢(prospective dream)

補償の域をこえ、遠い将来へのビジョンのような意味をもって現れる。
これは予知夢とは違って、細部にわたっての問題よりは、むしろ一つの大体の
プランを提出する点に意味がある。(予知夢については後述)

ドイツ語をしゃべれないのに、べらべらとしゃべる夢を見て、ドイツ留学を決意するような事例がこれにあてはまる。

展望的な夢を見た場合、それが将来を「決定する」と考えることが危険なことはいうまでもない。ドイツ留学の例では、ドイツ語を話す夢を”見たから”、ドイツに留学したと単純に考えるような場合である。展望的な夢はプランにすぎず、実行するかどうかは本人次第である。この場合においても、夢の提出したプランの方向に向かって努力を続けるための意識の関与の大切なことを忘れてはならない。

ただ、この人が努力をし続けてドイツ語をほんとうに習得し、留学した場合でも、「夢のお告げ」が実現されたように感じられることがあり、この人は意識の努力を忘れ、「夢のお告げ」のみを信じるようになり、もはや夢のお告げは効力を発揮しなくなる。

また、この人は実際にドイツにいったが、子どもを授かる夢を見たからといって、すぐに子どもが生まれるとは簡単にはいかない。夢占いの本を買って、青い鳥の夢をみたからこういうことが起きるなどの荒唐無稽な夢の信者になってしまうことは避けてほしい。

夢分析は非常に危険である。非常に印象深い展望的な夢を見た場合、その印象があまりに強いために心を動かされてしまって、それからのちに、単純な夢信者になってしまって、合理性を失ってしまう可能性が非常に高い。夢の内容は、あくまで内的現実と外的現実が絡み合ってできた心像としてみるべきである。

「子供が生まれる」という心像は新しい感情が生れ出たのか、新しい人間関係が作られたのか、ともかく、何が生れようとしているのかは、そのとき、そのひとの意識の状態に照らして綿密に調べられて後に、何を表そうとしているか同化を決定すべきであって、簡単に正月に鷹と富士山となすの夢をみたからといってめでたいとするのは本当におめでたい。付け加えると夢占いの本は、連想の参考としては使えるが、回答集として作られているので、占い好きな人がそれを買うのは止めないが、全く普遍性がないため(すべての人に当てはまらないため)、心理学的に言えば、コールドリーディングを多用する占い師が作った誤った危険な本である。

夢が展望的な意味をもつため、心理療法の場面では、その治療の予後をある程度示すものとして、大きい意義をもってくる。心理療法に夢を用いる場合、治療の最初に示される夢は初回夢(initial dream)と呼ばれ、治療の全過程を展望しているかのような意味をもっていることもあり、重要視される。この初回夢の重要性はフロイトとユング共通して認めている。治療の実際場面においては患者はその悩みの解決の糸口をつかめず、まったく希望がもてないとき、医者もあきらめそうになるとき、明るい将来を指し示す展望的な夢に支えられて、治療を継続して成功に至るときもある。あまりに暗い現実に対して、明るい夢をみて患者は驚くが、それが暗闇を照らす一条の光のような役割を持つのである。

 

ユング心理学 夢分析 2 夢の機能 1

夢は複雑だが、一応分類はできる。下記に示す。

(1) 単純な補償

これは意識の態度を補償したり、あるいは意識的体験のたらないところ、未完のところを補うような夢で、比較的わかりやすい。自分の知能を過小評価しているときに、IQテストを受けて高い数値が出て驚いているという夢を見た場合などである。

ユングは女性を治療しているときに、ある夢を見る。

「高い丘の上の、城の上に彼女がいて、私は頭を上にそらさないと彼女がよく見えない。」というものである。

そこで、ユングはこのように患者を仰ぎ見る夢をみたことは、自分がどこかで患者を見下していたことに気付き(相補性)、治療が好転した。

医師、私の経験からすると女性の医師が患者を下に見下す態度をとることが多いように思われる。これは単純に私の女性に対する多様なコンプレックスが女性の医師に投影されているだけではなく、客観的事実として認められると考える。どんな種類の病院の女性医師も同じような態度でひいき目に見ても見下した態度を取るためである。男性医師もそのようなタイプがいないことはないのだが、男性医師は比較的、心のなかで見下していたとしてもそれを表には出さない。私は病気が多いので、いろいろな病院に何度もいっており、その標本数からすると、この傾向は信頼性が高いと言えるのではないかと考える。また、女性医師は見下されることを恐れるための防御として、そのような態度を意識的にか、無意識的にか、とっているとも考えれば、怒りもおさまるのである。